クルミを割ったことのない日々

思いついたことを好きなだけ

バナナ

今週のお題「私のおじいちゃん、おばあちゃん」

 

うちのばあちゃんは介護施設に入っている。透析が必要な身体になってしまったからだ。
ばあちゃんは昔は大柄で甘いものが大好きだったが、今では身体もすっかり縮んでしまい、甘いものは自由に食べられない。これはもう仕方のないことだ。
透析を受けている人はカリウムの摂取量が限られている。カリウムといえばバナナだ。
先日ばあちゃんに会いにいくと、施設のおやつにバナナが出されたと嬉しそうに話した。「半分もない、こーんな小さいの」と言って、すっかり細くなった指先でバナナの大きさの丸を作ってみせて笑うと、「美味しかったぁ」としみじみバナナの味を思い出しているようだった。
しばらく別の話をしていると、またバナナの話をはじめた。よほど嬉しかったのだなと思い黙って笑いながら聞いていた。

その日もまたおやつの時間になった。おやつは大きなテーブルの並ぶ食事スペースに入居者たちが集まって食べる。
「じゃあそろそろ帰るね」と言って、ばあちゃんの車椅子を押して食事スペースまで送ることにした。
食事スペースの方には初めて行く。見分けがつかないくらい同じ背格好のお年寄り達が集まっていた。ばあちゃんと同じ透析患者が多い。
壁には入居者たちが習字で好きな言葉を書いた作品が飾られていた。
さまざまな言葉の中でも、何人もの人が書いているこの言葉が心に残っている。

 

 

 

「バナナ」