クルミを割ったことのない日々

思いついたことを好きなだけ

消えた蒲鉾と無口な田作

2019年元日。

夫の実家で過ごす予定が直前で変更となり、我々夫婦はおせち難民となっていた。

 

家にある「おせち料理」といえるものは黒豆だけ。どうしてもってわけじゃないけどさ、でもあれば食べたいじゃない、蒲鉾や栗きんとん。だってお正月だもの。

そんなわけで、つい数日前まで「正月三が日くらいみんな休んだらいいんだよ」「世の中働きすぎだよ」などと話していたくせに、さっそく元旦からおせちを求めてスーパーに訪れた夫と私。

「だって急だったからね。急遽予定が変わっちゃったもんだからね」

「そう、仕方ない。それに店は開いてるんだから利用してあげた方がいい」

などと誰に向けての言い訳かわからないが、どこか後ろめたい気持ちを払拭しようと自己弁護しながら我々は蒲鉾売り場に向かった。

 

無い。

 

いつもの安い蒲鉾が無くて正月の高級蒲鉾しか無いとかいう「年末あるある」ではなく、蒲鉾という蒲鉾が一切合切無い。蒲鉾の空間だけポッカリ空いてテナント募集中状態。

であれば、と年末散々通り過ぎたおせちコーナーに行くが無い。というより「おせちコーナー」自体ごっそり無い。どこ……いった?

「まさかもう安売りの所?」と見に行くと、田作だけ気の毒なほどあるのみ。

いやぁ、田作は色々あっての田作であって田作だけはキツイわ。グループで遊んでて不意に一番話したことない子と2人きりになった時みたいになんとなく気まずくなっちゃうわ。話しやすい蒲鉾君も癒しキャラの栗きんとんちゃんもムードメーカーの伊達巻君もいなかったら、あの田作君と何話せばいいのよ。いや、良い人なのはわかってる。優しいし。でも彼無口なのよ。絶対向こうから話しかけてこないし。あ、でもしっかり者の黒豆ちゃんが先に家で待ってるんだった。でも田作君と黒豆ちゃんて話してるとこ見たことないかも。2人ともどっちかというと聞き上手だから話は弾まないのかもなぁ。あーどうしよう。

 

田作には軽く会釈だけして、その後近くのスーパーを計3件ハシゴしたが蒲鉾はどこにも無かった。まるでこの世から存在を消されたようだった。栗きんとんも伊達巻きも当然のごとく無かった。

え、マジでどこいったの?全部売れたの?あんなに?ホントに?

 

我々は諦めきれず、蒲鉾の面影を求めてちくわを買ってきて食べた。美味しかった。

 

そんなお正月。