クルミを割ったことのない日々

思いついたことを好きなだけ

『ダンケルク』を観た感想

恥を忍んで言うが、私は勉強をロクにせず生きてきて全くもって歴史に疎い。当たり前のようにダンケルクがフランスの地名だと知らず、この出来事も知らないまま観た。
でも世の中の私と同類の人たちが「戦争とかわかんないし…」とか「銃でバンバン打ち合うんでしょう?」とかで観るのを躊躇っているなら、大丈夫!そういうんじゃないっす!私は「戦争映画とか無理」って人こそ『ダンケルク』だと思ったから。

 

戦争映画って、とにかくなんだか男たちが熱く戦ってメッセージすごい渡してくるかっこいいだけのやつとか、お涙ちょうだいドラマで「愛!勇気!友情!葛藤!そして感動のラスト!」みたいなノリで誰が死ぬとか死なないとかアーーー!!!しらんしらん!てやつとかあるから観る前は少し心配してた。

でも『ダンケルク』はひたすら「怖い怖い!もう勘弁してー!」ってくらい「体感する」演出になっていたので、戦争への恐怖感や嫌悪感をぞんぶんに与えてくれた。
なんせジャンルが「スリラー」だもの。

 

ドラマ的描写もないわけではない。でも全然説明してこないので、その分「お前誰?」という人達がどんどん出てきては怖い目に合うのを観続けることになる。観てる方も落ち着く暇もなく、ずーっと怖いとこに放り込まれる。誰のこともよく知らない、周りの状況もよく見えない、主要人物たちと同じ環境に置かれる。
「死にたくない帰りたい」という誰もが共感できるその一点に集中させてくれるからこそ、借りもののお涙や煽られた怒りなど余計な飾りに気持ちが分散しない。その分「戦争やだ怖い」という感情へ畳み掛けて来る。
そしてこの状況において自分はどこまでいい人でいられるかを考えた。戦争さえ無ければ皆友達になれたであろう若者たちの行く末が辛い。その後のことは映画見終えてから知って絶望した。


そういえば敵の姿が全く映されず、あくまで迫り来る恐怖としてのみ存在する。それは相手を敵然としない意味もあったと思う。逆の立場でも同じように人が生きようとしていた、それがまた辛くもある。

 

映画を観てる間、肩に力が入ったまま叫ばないように口に手を当てて観ていた。隣の知らないおじさんも同じだった。
大音響が苦手でなければ、音が身体中に響き渡るIMAXがおすすめ。
映画館で見ないと十分には伝わらない映画(『ゼログラビティ』が顕著な例)というのがあるが、この映画もその類の1つだと思った。
興味ある人は絶対映画館に行くべき。それだけは間違いない。

 

若い俳優たちが注目されてるけど、渋い俳優陣もよかったな。
f:id:oki_nikki:20170921132744j:image