クルミを割ったことのない日々

思いついたことを好きなだけ

それでも寅さんが好き

映画『男はつらいよ』の50作目が製作されるとのニュース。

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寅さんがフルCGだったらやだなぁなんてのは杞憂だろうけど、どうなるのか楽しみと心配の半々。

というのも、最近たまたま『男はつらいよ』シリーズをよく観ていたのでそれなりに愛着が湧いていたところなのだ。

 

アマゾンプライムで全作配信しているので、私は1作目から全てではなくざっくりと20作程度観ているところで後年の作品は未見という状況。ということを予めご了承ください。

 

まず「寅さん」について、よく知らない人には「ただの陽気なおじちゃん」という印象かもしれない。

しかし一作でも観ればすぐにわかるが、寅さんはかなり面倒くさくて厄介でいい加減な男だ。

毎度毎度いい歳してすぐヘソを曲げて家族を困らせるし、美人に出会えばすぐ惚れて恋わずらいで寝込んだり、振られればいじけて旅に出る。そんな愚行を見ていると、寅さんのおいちゃんと口を揃えてため息まじりに「バカだねぇ」と呆れてしまう。

さくら(寅さんの妹)は寅を甘やかしすぎだよ、あーもータコ社長もまた余計なこと言って、おばちゃんはハッキリ言ってやったらいいんだよ、ね、おいちゃんだってそんな気に病むことないよ。

なんてやじりながら観る。

ずっとその繰り返し。

 

もちろん良いところもたくさんある。でも冷静に勘定すれば結局平均よりマイナスになるくらい寅はどうしようもない。本来ならハブに噛まれて死んで終わる男の話*1だ。

だからちょっと寅さんをかじった人の中には「なぜ寅さんが人気なんだ。クズで最低じゃないか。」という人もいる。

まぁそう思うのもごもっとも。

でもそれならなぜ我々は寅さんが憎めないのだろう。

ひとつは演じている渥美清さんの魅力によるところが大きい。

渥さんは独特の愛嬌があるのはもちろん清潔感があるのがいい。寅はバカだけど渥美さんには知性を感じる。そこが寅さんというキャラクターを絶妙なバランスに仕上げていて、肩をすくめながらはにかんだ笑顔は四角いキツネみたいで不思議とかわいく思えてくる。

そして寅の言動はまるで子供みたいに打算がないからそのあまりの不器用さに「しょうがないね」となってしまう。マドンナ(作品毎に出てくる相手役女性)に振られてあの小さな瞳に愁いをたたえていると、さくらのように「バカね」と涙を滲ませながら慰めたくなる。

それにさ、いつもまた会いに行くんだよね。振られた相手でもただ会いに行ってちょっと様子見て帰るわけ。山奥でも雪国でもわざわざ、いつもの格好でいつもの明るい寅さんで。相手は「また会いに来てくれた、やっぱり寅さんは寅さんだ」って安心したように喜ぶ。それが寅さんなりのけじめのつけ方なのかもしれないけど、なんかいじらしくていいじゃない。そんなところがどうしても憎めないとこかなぁ。

 

最近観た中でのおすすめをいくつか。

 

第1作『男はつらいよ

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色々観てから改めて第1作を観るとかしこぶってる寅が余計腹立つし色々どうかしすぎていて笑うしかない。嫌いだって人はこれだけ観てる可能性ある。

 初心者向けじゃないかもしれないが問題作であり名作だと思うのでいずれかのタイミングで観てほしい。

黒澤映画でおなじみの志村喬の熱演が映画の格を上げている。

 

 

第17作『寅次郎夕焼け小焼け』

  

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特に好きなところは、マドンナのぼたんを泣かせたやつをやっつけようと行き先もわからないまま家を飛び出していくシーン。

バカだけど、あんな風に自分のために駆け出してくれたら惚れちゃうよ。

そして行き先がわからずそっと戻ってきてこちらを外から見てる寅さんももうバカでかわいい。

この回はぼたんとの関係性も好き。

 

 

第20作『寅次郎頑張れ!』

 

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これは寅さんがメインではないが、思わぬ展開があって笑った。

若い中村雅俊大竹しのぶが輝いている。

 

 

 

第15作『寅次郎相合い傘』

 

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第25作『寅次郎ハイビスカスの花』

 

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それから何と言っても伝説のマドンナ「リリー」の回はどれも味わい深い。

リリーはシリーズ中最も寅さんが結婚する可能性のあったマドンナと言われている。
(リリーが出てくるのは他に第11作と第49作がある。第49作はまだ観ていない)

再登場の上記2作は恋愛ドラマとしてとても心を動かされた。
この2人結婚すればいいのにとも思ったり、こりゃ結婚してもうまくいかないよとも思ったり、それでもただそばにいてもいいんじゃないかと思ったり。寅さんの気持ちもリリーの気持ちもさくらの気持ちも複雑で、観ているこちらも正解を導けない。これが人生だよなぁなんて思ったりして。

そしてこの2作で寅さんの1番良いところもダメなところも見えて好きになる。

 

 

男はつらいよ』はわかってても楽しめる最高の落語劇だ。

笑って、時には泣いて、恋愛ものとしてだって悪くない。

50作目を前に、未見の方はこの機会に。

*1:テレビ版の結末

『里見八犬伝』を観た感想

凄い映画を観てしまった。

アマゾンプライムで観られる『里見八犬伝』(1983年)を何も知らずに観たら、もとから貧困な語彙力が吹っ飛んで「凄い」としか言えなくなった。

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凄いポイントその1 : 真田広之が超光ってて凄い!

かんっぜんに度肝を抜かれたのが真田広之さんですよ。何あの人、めちゃくちゃ凄くない?!!この映画について誰かが「凄いよね」と言ったらまず「あぁ真田広之ね」という返事で正解だと思う。

正直なめてた。『高校教師』があんなに身体能力高いなんて思わないじゃない。過去に売れっ子だったけどなんだかハリウッド行っちゃった人、みたいな印象しかなくてこの映画もビジュアル担当だと思ってた。

観始めたら

「あれ?この暴れ馬乗りこなすのやるなぁ」

「え?後ろ手に縛られた状態で馬から降りた?」

「わわ?!殺陣やば!凄い!!」

と、ソファーでのんびり見始めたのにいつの間にか前のめりになっていた。

なんなのJAC*1って。レンジャーでも育成してんの?

後日『戦国自衛隊』を観てたら馬から大ジャンプしてる人がいて、おいおい真田広之かよと思ったら真田広之だった。

どうりで『ラストサムライ』でトムクルーズに嫉妬で出番減らされるわけだよ。その話聞いたときはまた日本のメディア話盛ってらぁと思ってたけど、ほんと土下座だよ。そうですよ、なーんにも真田広之の事知らなかったですよ。もっと知っていたら『ラストサムライ』の見方も違ってたよ。渡辺謙さん目当てだったから注目せず観ちゃったじゃないの。

はい、もう真田広之の株が1部上場しましたー。今後も投資していきますー。で、どの作品から観ればアクションスター真田広之が観られるんでしょうか。。。

素晴らしいアクションと共に、ご存知のあの端整なビジュアルで親兵衛という役柄の悪ガキっぽいかわいらしさ(というには初めちょっと嫌なやつすぎるけど)と後半の憂いを帯びた色気の同居する魅力を存分に堪能できるのが、まず最大の凄いポイント。

 

凄いポイントその2 : 役者が超揃ってて凄い!

この言葉を読んで字のごとくに使わせてもらいたい。真田広之は唯一無二の存在としても、薬師丸ひろ子をはじめ全員適役。30代の私でもわかる名優の方々が若い姿でちらほら。京本政樹は何も変わっていないのですぐわかった。あと夏木マリって昔からあの感じだったんだね。あの美しい魔女みたいな役は今年映画をリメイクするとしても夏木マリがやりそう。ヌードのシーンはさすがに今は、、、と思ったけど夏木マリならひょっとすると大丈夫かもしれない。

 

凄いポイントその3 : お金が超掛かってて凄い!

絶対莫大なお金かけてるだろうおかげで35年前のCGが駆使出来ない時代の作品でもちゃちさがない。これどうやってるの?と驚くほど。たぶん金かけて壮大なセット作ったり最先端の特殊メイクや特撮でうまいことやってるんだろうけど、今観ても古さが邪魔をしない。

逆に今の映画は世界的にCGが進化しすぎて安いCGを多用すると不自然さが許容しづらくなっている部分はあるかもしれない。

 

凄いポイントその4 : 演出が超ひねってて凄い!

黒澤明をオマージュしたような時代劇にもみせつつ、劇中にロック調の英語の歌を使用したりちょっと気恥しくなるほどの長いラブシーンもあり、ハリウッドのようなスケール感のあるファンタジーに仕上げている。

後半信じられないスピードで人が死んでいくのはビックリしつつも、例えば『ロードオブザリング』を2時間にまとめたと思えば逆にありがたいくらいに無邪気に楽める。正直、どうしてこうなったっていう最初の説明は頭に入らなかったけど観ていくうちに何となくわかってくるから大丈夫。

 

凄いポイントその5 : 監督が超異彩放ってて凄い!

噂で凄い凄い聞いてたけど、自分で体感しないとわからないもんだな。深作欣二監督作品で観たことあったのは 『忠臣蔵外伝 四谷怪談 』と『バトル・ロワイアル 』だけだったけど、確かにどちらも印象深いし不思議とたまに観返したくなる。まだ3作品だけしか観てないのではっきりとはわからないけれど、固定概念にとらわれることのない作風にはとても魅力を感じる。こうなってくると深作監督作品は進んで観ていきたい。『復活の日』がアマゾンプライムにあったので必ず観よう。『魔界転生』もいつか観たい。とはいえ『仁義なき戦い』はちょっとどうだろう…ヤクザものなぁ。『アウトレイジ』は好きだけど。

 

結論:『里見八犬伝』は凄い!

 

いやはや、私自身そんなに映画を知っているわけではないにしろ、うっかり知らないままになりそうな名作って世の中に本当にたくさんある!

なんでもそうなんだろうな。

もっと色々観たいし体験したい欲が高まっているこの頃。

 

スプラッターコメディはサイテーでサイコー!

アマゾンプライムで観られるスプラッターコメディと呼べる2本。

決して万人におすすめできるジャンルではないと思うけれど、ハマればとことん楽しめるアトラクション的な楽しさがある。

 

『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』

タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら(字幕版)

開始数分で「これ絶対面白いやつだわ」と確信した。のっけからどう考えても見たことあるホラー映画の完璧なパロディ。悪魔のいけにえがベースかな?でもノリとしてはリメイクのテキサスチェーンソーの方かも。でももっとそっくりな映画があった気もする。ホラー映画をそこそこ見たことある人なら、そんな既視感でまず笑える。ホラー映画では怖かったはずのシーンを見事に笑いに変えられていることに感動に近い興奮を覚えながら心底楽しんでしまった。人は死にまくるけどホラーではないかな?ホラーとはなんぞやって感じだけど。

初めからずーっとじわじわと笑いのリズムに乗せられる阿波おどり状態で、飽きさせないテンポ感はここ最近観たコメディの中では群を抜いている。ひと昔前に「エログロナンセンス」が流行ったと聞いたが、怖さと笑いって本当に紙一重だしなぜか相性がいい。グロとナンセンスが最強のタッグを組んで、このどうしようもない笑いに繋がっている。

「あー!!うわうわ、うそでしょ!ひどい笑」って感じのスプラッター加減です。耐性無い人はちょっとキツイと思われるシーンもあるけどなぜか笑えてしまう。ちなみにこの手の映画にありがちな「エロ」要素はかなり控えめなのでご安心を(?)。

ちなみに私は何の前情報もなく『ハングオーバー』みたいなおっちょこちょいコメディだと思って観始めたら普通に人が死んだので、わー?!ってなった。めっちゃ笑った直後の死だったので尚更。

  

 

『ゾンビーワールドへようこそ』

ゾンビーワールドへようこそ(字幕版)

邦題とパッケージが残念すぎ。ちゃんと観ました??ってレベル。
無駄な説明的エピソードとかなくスルスルと引き込まれていく面白さ。逆に説明はかなり端折ってるからこれは何で?とかあんまり気にしたらダメ。ツッコミながらワーワー見るのが良い。

こちらはエロでグロでナンセンスかもしれない。エロというかオゲレツって感じ?下ネタも笑えるような気の許せる人とか1人で観るのがおすすめ。きゃーこわ〜い(≧∀≦)っていうよりギャーわはは!!逃げろ逃げろ!(^o^)って感じだから初々しいカップルで観たら気まずいかも。ちなみに私の個人的な下ネタの基準で言えば『TED』はわりとダメで『最終絶叫計画』は下品だけど好き。「もうサイテ〜笑」と笑えるレベルってとこですかね。あんまり参考にならないか…。

ホラーとしてやけに怖いシーンもあるから油断はできない。

 

  

 

邦画で言えば以前感想を書いた『貞子vs伽椰子』はスプラッターコメディに近かった気もする。大泉洋とかがおとぼけな主人公として追加されたらすぐにコメディにできる。きっちりホラーだけど怖いの通り越して笑えたのでおすすめ。

oki-nikki.hatenablog.com

 

 

『リメンバー・ミー』を観た感想

お題「最近見た映画」

 

※ネタバレ気を付けてますが、注釈にはネタバレを若干含むので少し注意

 

ディズニー×ピクサー最新作『リメンバー・ミー』を遅ればせながら観てきました。

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なぜ遅れたかと言えば、あんまり面白そうな気がしなくて。というか、絶対観に行く!と思わせる要素が私の中では薄いように思えていた。キャラクターもそこまで魅力的に見えていなかったし、「子供が異世界で大冒険」みたいな感じならもういいかなぁ、ってちょっと冷めた気持ちもあったりなかったり。

とはいえ、ディズニー×ピクサー作品はこれまでどんなにいぶかしげに観てもやっぱり安定の面白さだったわけで、『インサイド・へッド』なんて"氷の心"と夫に揶揄されるほど滅多に映画で泣かない私が家で観て号泣したくらい良かった。あの時、映画館で観とけばよかったと後悔したんだよなぁ。うーん、でも今回はそれほどかなぁ。くらいの気持ちでいたところ、夫が『リメンバー・ミー』観たいと言い出してくれたので、ならばせっかくだし観て損はないでしょ、というのテンションで観に行った。(私っていつも映画館行くか悩んでるな。映画鑑賞料金もっと安ければなぁ…)

 

いや、あっぶなーー!

大傑作見逃すとこだったーー!!!

 

観たのは吹き替え版。これがまた良かった。

今回の映画は主人公の少年ミゲルの声優の力量にかかってるところもあるけど、日本語版は世界的にみてもかなり素晴らしいはず。英語の字幕版観てないのに断言もできないけど、それならもうブルーレイは絶対買うので各国版を特典で収録してほしい。それで何を聴き比べたいかって、ミゲルの歌よ歌!

今回個人的に嬉しかったのは先月観た『クソ野郎と美しき世界』でやってくれずに気持ちが消化不良起こしていたこと*1を見事にやってくれたので、これだよこれこれ〜!と私ご満悦。何よりその展開に必須の「驚くべき歌唱力」が想像を超えていた。

この声優が誰なのか、観てる間は一般的に考えて女性の声優さんか歌唱部分だけ女性の歌手の方かと思っていたら、セリフも歌も全て石橋陽彩くんという13歳の男の子!

この石橋くん、2015年にTBS『世紀の歌声!生バトル日本一の歌王決定戦!』のジュニア部門でグランプリを獲得してるんだけどそれをたまたまテレビで見てた覚えがあって、小さいのにすんごいうまいから本戦の大人の出場者が見劣りするという悲しいことになった印象が強く残っている。あの時のあの子か!とわかった時とても合点がいったし勝手に伏線が回収された気分。

そんな石橋君くん版ミゲルの歌を聴くためだけでも観た方がいい!間違ってもネットの動画とかで適当に観てこんなもんか、とか観た気にならないでちゃんと映画の流れの中で聴いてほしい。はじめに歌った『ウンポコロコ』(ウンコポロポロという替え歌を世の小学生がゲラゲラ笑いながら歌ってそう)って歌が非常に良くて本当それで即心奪われた。

ただ、私の最近の映画感想の流れからしてまた歌が良ければいいって話かよって思われるのは不本意で、それだけじゃなく私でもホロっとくるくらい感動できるし驚かされる展開もしっかりあってストーリーも素直によかった。観ていくうちに、ミゲルのことなんか超かわいく思えるので、キャラクターの魅力うんぬんは全くいらぬ心配だった。

描写として部分的に気になるところもあると言えばあるけど(若干流れに無理あるかなぁとかここでみんなが大喜びってちょっと残酷じゃないかなぁとか)、それも自分の中で擁護できる程度のことなんで大丈夫です!絶対おすすめです!

だって観てから1週間経つのに、未だにちょっと余韻に浸るときあるもの。気づくとミゲルのリメンバーミーを思い出し口ずさんでちょっとジンとしてる。

まだ観てない人は、本当観た方がいい。本当に。

 

ここから先はちょっと本編と関係あるようなないような不満を言うとですね、最近のディズニー映画あるあるの問題。

まず子供にもわかるように作中の文字をわざわざ日本語に修正してくれてるのはわかるんだけど、フォントどうにかなんないの?問題。せっかく死者の国なんて本当に美しい世界観にしてあるしメキシコの町もかわいいデザインや色使いで作り上げられているのに、そこに急にPCに標準搭載されているようなゴシック文字の不釣り合いな「リメンバーミー」とかの文字が入るとちょっと萎える。もうちょっとどうにかならないのかなぁ。

それから日本のプロモーションとして吹き替え版の主題歌を日本の歌手が歌うの、あれ、、、やめません?問題。CMで聴いた時にそこまで良い歌だと思えなかったから、主題歌がアカデミー歌曲賞受賞したって聞いた時は「え?『グレイテストショーマン』の方が全然いいのに」と思ってた。映画観て『リメンバー・ミー』の歌の良さは完全に納得したんだけど、あらためてエンディングでシシドカフカちゃんの歌聴いても、うーん…。ごめんね、シシドカフカちゃんが悪いんじゃないんだろうけど、あの歌のアレンジが良くないのかなぁ、とか言うと今度スカパラ批判になっちゃうかしら。どっちのことも嫌いじゃないんだけどね。劇中の歌が良いってなるのは思い入れからして当然なわけで、歌わされる方も大変だよね。過去のMay J.の叩かれようで懲りてはくれなかったか…。

 

ついでに、同時上映のアナ雪の短編『アナと雪の女王/家族の思い出』については、本当酷い。ハッキリ言って早く終わんないかなって思いながら観てた。ダラダラ長すぎるし、オラフがかわいそう過ぎて笑えない…。そしてお騒がせ姉妹に国民は辟易してんじゃないかと要らぬ心配すらしてしまう。そうやって見ると冒頭のシーン*2を邪推してしまう。エルサはメンヘラぎみのめんどくさい女感が増しちゃって「♪どんなときでもそばにいて」「♪あなたといるだけで何にもいらない」てな歌がうすら怖く重たく感じてしまったのは私だけだろうか。でもさ、エルサもまだ20歳とかでその前は何年も引きこもってたのに国を背負わされてるんだよね、しょうがないかな?…こう書いてみると闇深いわ。あーあ、私だってこんな短編で彼らに嫌な感情を持ちたくなかったよ。『アナと雪の女王』は大好きなのに。

だけどまぁこの苦痛を乗り越えてからの『リメンバー・ミー』だから余計に面白く感じられるかもしれないし、一応テーマが「家族」とか「伝統」とかちょっとリンクしてるところもあるので、、、いやだからってあの22分はキツイわ。あ、ジャガード織みたいなアニメーションのところは面白かったです。そこだけ、そこだけがんばって観て!あとはポップコーンでも食べてたりお子様は念のためもう一回トイレにでも行っておいでよ。

さっき知ったけど、アメリカでは不評で途中から併映が取り止めになったという話もあるみたい。それが真実かはわからないけど、ありえなくないと思える話。一緒に観た夫は『リメンバー・ミー』は星5つで、アナ雪の短編はゼロにしたいくらいだけど星1つという評価つけてた。まぁそれも極端だけど否定はしない、かな。

 

いずれにせよ、良いも悪いも体験できるうちに映画館に行くことはおすすめしたいです。

是非。

 

 

 

*1:なかなか歌わないところからの実はすんごい歌えるーー!のやつ。代表作は『天使にラブソングを

*2:国民が続々帰っていくところ

『クソ野郎と美しき世界』を観た感想

《ネタバレあり。ネガティブ意見もありますので不快になる方注意》

 

公開は終わっちゃいましたが、最終日に観に行ってきました。

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正直、まぁこんなもんよね、という感じではあった。ただ、このメンバー集めておいて本当ならこんなもんじゃないでしょ、とも思う。

なんだけど、これは今この時に劇場で観ることに意味があったという気がする。

ファンなら尚更。

 

すごくファンなんです!っていうほど今熱烈ではないんだけど中高生の頃までは一番好きな芸能人としてダントツ香取慎吾だったし、やっぱりその頃の私のためにこれを見届ける義務があるというか、ネット配信を待つのは違うだろうと思ったわけです。『香港大夜総会 タッチ&マギー』*1も劇場に観に行った、慎吾ママのおはロック*2もCD買った私ではないか、と。

 

ひと昔前にショートフィルムがちょっと流行った時期あったよね。『Jam Films』とか何本かは観たかな。イメージ的には若手の映画監督とかCM監督なんかの作品が何篇か集まってるけど、ちょっと面白かったりなんだか面白くなかったり面白くなりかけてるうちに終わっちゃったり。今回もその感じはぬぐえない。

 

でも「その時」じゃないと味わえない事ってあるじゃないですか。

子供だからワクワクできる本とか、思春期の頃に聴く「そんな大人にはなりたくないyeah」みたいな曲とか。

安室ちゃんの歌だって、今聴きたいでしょう。

あ、そうだよ、「旬」だ。今一番脂がのってるんじゃないかなぁこの映画。黙ってても売れっ子だった彼らが一生懸命ラジオに出まくって宣伝したりして、熱烈なファンが何回も劇場に足を運んで場所によってはチケットが取れないとか騒いでたりもした、旬の今この時を逃したら味変わっちゃう気がする。

SMAPが解散してファンも本人たちですら不安で手探りな現在。きっとこれから彼らは活躍の場をどんどん広げていくはず。そのデビュー作だと考えるとすごく愛おしくないですか?この決して完璧じゃない映画。ね!

 

EPISODE.01「ピアニストを撃つな!」

最近のひげ吾郎ちゃん好きだよ。一時、剛君もいいなって思ってたから吾郎ちゃんだけタイプ外だったけどやっと良さに気づいた。そんな吾郎ちゃんのカッコよさと変人ぽさがよく出てたからフフフ、って思った。満島真之介君は最後のクレジットまで誰だか気づかなかった。すごいね。姉弟揃っていい役者だね。馬場ふみかちゃんは可愛いけど見たことない子だと思って画像検索してみたら全然別人みたいで驚き。

面白くなりそうな雰囲気だけはすごくあったんだけど、本当ちょこっとだけ見せられたみたいな感じ。

 

EPISODE.02「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」

中島セナちゃんがとにかく可愛いのです。こういう感情が見えない表情する子、好みなんだよな。最近だとラーメンズ片桐仁さん家の子がこれ系で可愛かった。

 

この話が一番そのまんま本人「香取慎吾」を描いてる感じで、ファンならグッとくる人も多いと思う。そうだよね、「夜空ノムコウ」も「らいおんハート」も「世界に一つだけの花」も、もう歌いたくても歌えなくなっちゃったんだよね。 72時間テレビの時に剛君が「僕ら、曲(持ち歌)がないんで」と言ったときに現実を突き付けられたというか、「え!やっぱそうなの?」って思ったよね。そうきてこうだから、慎吾君がインタビューで度々口にする「ゼロからのスタート」っていうのはこういうところから来てる気持ちなんだろうなって思った。過去を奪われちゃう。楽曲の権利とか複雑なことはわかんないから仕方ないのかもしれないけど、やっぱりどうかしてるとも思う。

ちょっと話それるけど、剛君ていつも核心的なことをさらりというけど、そういう役割で言わされているのか自分で投下しているのか、どっちなんだろう。例の公開処刑の時の「ジャニーさんに謝る機会を木村君が…」ってセリフとか。いちばん内面を見せずにセリフとして口にできる人だとは思うけど。

話を戻すと、くすっと笑えたり全体の雰囲気は一番好きだったので歌喰いともっと一緒に過ごして心を通わせたりしてほしかった。それで歌喰いが何らかの今までにない影響を慎吾君に与えてた、みたいなくだりはほしくないですか?

 

 EPISODE.03「光へ、航る」

 剛君の演技力がすごくてこの短さじゃもったいない気すらしちゃう。他の話と無理に繋げないで単体でちゃんと見せたほうがいい内容だったかな。最後に話をつなげるためにこれ単体だと話が唐突に進んでしまうのが残念。この話の監督の爆笑問題の太田さんのことは結構好きなんだけど、これ太田さんぽいなぁって思った。芸人として見せてる方ではなく、小説書いたりする方の太田さん。監督伏せられててどれが太田さんの作品でしょう、って言われても当てる自信ある。と、これを悪くとらえないでほしいのだけど。(こういうこと言うやつ太田さんは嫌いだろうな 苦笑)

 

EPISODE.04「新しい詩(うた)」

最後にすべてがつながる!にしては、んん??という感じですが、もうそれはいいです。

吾郎ちゃんの歌も素敵だけど、なんせ慎吾君の『新しい詩』がすっごく好き!

私ミュージカルが好きなんですけど、こういう「声よとどけーー!(バーン!)」みたいな感じで歌われるとそれでもう「合格!!」ってなっちゃう。(何これ伝わる?)

歌詞は3人の前向きな決意表明といった内容で、これを聴かせるための映画だったんだな、と皆が強引にでも納得させられるほどの光に満ちたシーン。

これをもっともっと私の好みとして勝手な願望を言わせてもらうなら、鼻歌くらいから少しずつ「歌える…歌えるぞ……ぅう歌えるぞー!」って感じをどうせなら見たかったかな。『天使にラブソングを』的な。あるいは『リトルマーメイド』の声を取り戻すシーンみたいな。いきなりそれまでと別人みたいに明るく歌ってたからそこがもっと盛り上がる演出にしてもよかったのに、と思ってしまった。

あと、剛君が全然歌わないのもなんでーって思った。役柄に合わないのだとしたらちょっとセリフ的な感じで入ったりすればどうかなとも思うし。『新しい詩』にちょこっとずつ吾郎ちゃんと剛君の声を混ぜてほしかったわけです。

とはいえ、文句みたいの言っておいてアレですけど慎吾君の歌声本当に好きなんで、中学生の頃の私に見せてやりたいくらいの俺得シーンではありました。

なにより『新しい詩』はミュージカル好きのツボをみごとに刺激してくる曲なんで、新しい地図のアルバム出るの待つかと思ったけどウズウズして結局ダウンロードしてしまった。のびのびと歌う慎吾君を思い出せるという意味でも観てよかった。そう、全然観て損はしてないですよ。

 

 

しかしあれだね、バタバタの超特急で作ったんだろうね。そのわりには、と言ったらなんだけど、かなり恐る恐る観に行った感じからすれば悪くない出来だったかな。なんせ歌がね。歌がいいんでもういいっしょ!最後のしっとりした歌も良いですよ。

 

だから第2弾決定しましたけど、もうこれは色々楽しみですよ。次はどう来るか。

劇場に行くかはまた悩ましくはあるんだけどね。歌うなら……ちと考える。

*1:DVDになってないんだ…。内容まるで覚えてないけど慎吾君が女装して可愛かったのだけは覚えてる。

*2:これも女装してる。どゆこと?!

『マグニフィセント・セブン』を観た感想

黒澤明の『七人の侍』を基にした1960年の西部劇映画『荒野の七人』をリメイクしたという『マグニフィセント・セブン』。アマゾンプライムで観てみました。

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七人の侍』は一度だけ観たことあるけど『荒野の七人』は観たことない、というレベルなので誰がどうとか詳しく語れない立場としてこの一点だけ強く伝えたい。

 

7人の男たちがかっこいいよー!イーハー!YEE-HAW!

 

無茶しちゃダメー!死なないでー!と応援したくなる。 

 

中でも個人的な1位はイ・ビョンホン

なんだかやたらと身体鍛えてて顔テカらせながらニンマリ笑ってる感じがやり手のホストぽくて好きじゃないなーって思ってたのに、すっかり魅了されてしまった。

よく考えたら彼の出てる作品をまともに観たこともなく勝手なイメージだったわけで本当申し訳ない。キムタクの映画『HERO』にちょい役で出てたのくらいかな、観たの。ビョンホンごめんね。

 

あるいは私がアジア顔好きなもんで、またそのマジックにかかっている可能性もある。

oki-nikki.hatenablog.com

 

しかし初めは似てるだけでビョンホン本人だと思わなかった。顔もテカってないし思っていたよりすごく華奢に見えたから。調べたら他が相当大きいのね!

いちばん大きくてクマ感のあるヴィンセント・ドノフリオ(『フルメタルジャケット』の「微笑みデブ」の人)が192㎝で小柄な印象のあるイーサン・ホークでも179㎝。他は全員180㎝越え。イ・ビョンホンは177㎝と決して小さくないのにこのメンバーなら小さく見えるはずだわ。爆笑問題の田中さん(154㎝)とかが並んだらホビット状態になりそう。

アジア代表としてのビョンホンの他にも人種、性別とポリコレ云々をビシバシ感じるメンバーを並べていて、今のハリウッドの考えが前面に出されたキャスティングね……と感じざるを得なかったりもするけど、それはそれとして全員キャラが話にマッチしてて素直に楽しめる。エマ役のヘイリー・ベネットも徳永えりに似てて可愛いしかっこいい。クリス・プラット演ずるファラデーなんてみんな大好きになるに決まってる。

 

ファラデーの古典的な”やれやれ系無敵プレイボーイキャラ”(涼しい顔してるのに悪者に殴りかかれれたら簡単に相手をノックアウトさせてそばで見ていた女の子にウインクするようなキャラ)もそうだけど、全体に漫画的な誇張されたキャラクター設定だったりセリフや展開だったりして、それが一周回ってストレートに楽しい。

 

デンゼルワシントン演ずるチザムが、仲間にする前のファラデーに言うセリフなんて、

 

ファラデー「何人集めた?」

チザム「2人」

ファラデー「そこの2人?」

チザム「お前と俺だ(you&me)」

 

ベタだけどいいよいいよ!こういうのどんどん入れていこう!っていう気持ちになる。

 

 

イーサン・ホークは先日『しあわせの絵の具』を観て好きになったばかりだったので、出てきてテンション上がった。

oki-nikki.hatenablog.com

 今回も良い役どころ。そして「グッドナイト・ロビショー」って名前が好きすぎる。なんだよその名前!私の謎のツボを突いてくる!

イ・ビョンホン演ずるビリーとの関係性もいい。

一緒に観ていた夫が7人揃うかどうかの時に「あとはゲイのキャラ出てくれば全方位への配慮完璧だな」と言っていたけどそれはさすがにね、と思いきや話が進むにつれて、グッドナイトの失態をかばったり心配したり再会に喜び彼の名前を呟くビリーはひょっとして……?この熱い友情ともとれる適度なにおわせが逆によかったり。

 

どんな違いがあるのか『荒野の七人』も観てみたくなった。あと『七人の侍』を観直したくもなった。今回の7人に『七人の侍』のキャラを当てはめるのはちょっと難しいほどアレンジされていたように思うけど、夫曰くデンゼルと志村喬はよく似ているらしい。その辺の確認や比較も改めてしてみたい。

 

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』を観た感想

お題「最近見た映画」

※ネタバレあります

 

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数年前にどこかの美術館のミュージアムショップで、一目惚れし衝動買いしたポストカードがあった。そこに描かれていたのは、素直であどけないタッチの中に温かみがあり幸せを分けてくれるような様な優しい絵。

その絵を描いた画家がこの映画『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』の主人公「モード・ルイス」だった。

 

この手の派手さのない映画は、退屈ではないかと心配して観ることを躊躇いがちになってしまう。この映画も「モード・ルイス」でなければ観ることもなかったかもしれない。あとはモード役がアカデミー賞受賞作品『シェイプ・オブ・ウォーター』でオスカーノミネートの女優サリー・ホーキンスというのも、見て損はなさそうという私のミーハー的打算が働いた点だったりする。とりあえず悪くなさそうだし、たまにはのんびりした映画を1人で観るのもいいなと思いきり、足を運んだ。

観客はやはり派手な大作とは違って年齢層高めで女性が多く、私と同じように1人で観に来た方も多かった。

 

モードは身体に障害を持っているうえに両親が死んでからは親類からも邪魔者扱い。かといって「かわいそうな子」に成り下がらず、自由を愛し自分を曲げず独立を決意する。なかなかしたたかなところが見初め若干の戸惑いを感じたけれど、それだけ強くなければこの人の人生は悲しいものに終わっていたかもしれない。そして愛情深く自分の在り方に囚われない人だから、きっとあんな絵が描けたのだと感じさせる。

映画は全編通してとても静かでセリフも少なく、BGMすら無いシーンも多い。だからこそモードとエベレットという2人の繊細な心の動きは、ふとした表情やしぐさとわずかなセリフで感じ取るしかないのだが、それを見事に演じ切っているのが前述のサリー・ホーキンスとエベレット役のイーサン・ホーク

サリー・ホーキンスはどうやら2014年のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』に出ていて見かけているはずだが、覚えているわけもなく。初認識といえる本作で、もうそういう人なのでは?と思いながら観ていたけれど、検索すると別人のようだったので凄いとしか言いようがない。

一方イーサン・ホークの出ている映画は『ビフォアサンライズ』『ガタカ』など観ているはずなのだが、不思議とあまり彼の印象がない。名前も顔も知っているのに、良くも悪くも普通のイケメン俳優といったイメージしかなかった。しかし本作でそれは本当に覆されて、こんなにいい俳優だったかと彼の最近の出演作に興味が湧いた。少なくともこのエベレットという役は彼の演技あってこそ魅力ある人物になったと思うし、それが何倍もこの映画に良い影響を与えていたように思う。

はっきりいってエベレットは粗暴で人としてはクズに近かった。こいつのどこがいいんだ?こんな男やめとけ、と最初は誰もが思うだろう。エベレットは荒波のように感情を大きく打ち付けたり寄せては返す。モードはそれを渚のようにいつもまっすぐに受け止める。でもそんなエベレットが徐々にモードに心を許し愛情を見せ始める。権勢で吠え荒ぶっていた野犬が少しずつ飼いならされていくようで妙に愛おしさが芽生えてくる。2人の不器用だけど確かな愛情がそこかしこに確認できると、観ていてなんともニンマリとしてしまう。

私がいちばんぐっときた結婚した夜のダンスシーンは脚本になく主演2人で作り上げた場面だそうで、そうした小さく温かな場面ひとつひとつが心に残ってじんわりと響いてくる。観ていると自分のパートナーが頭に浮かんで何かを思う人も少ないないはず。

 

電気も水道も通していない、人里離れた場所の小さな家での暮らしが舞台だったために、病院のシーンは現実を突きつけられたような気持ちにさせられる。もっとお涙頂戴にも出来たはずだけれど、そう描かなかった。そういう2人ではないという事だともいえるし妙なリアリティーに後から胸に迫るものがある。

ラストのエベレットが何を思っているのかは色々な見方ができると思うけれど、正解はない気もする。人は急に1人になったときの気持ちなんて1つじゃない。

 

この映画は説明も感情の押し付けもほとんどなかった。その分、モードの描いた小さな絵のように、観た後も静かに心に飾られていく。

 

2018/5/4追記

後日談書きました↓

まさかの勘違い - クルミを割ったことのない日々